建設業では、土木工事や建築工事が長期にわたるため、工事開始前や進行中に前受金を受け取ります。
工事中に発生した外注費や材料費などの費用は「未成工事支出金(仕掛品)」として計上し、工事完了時にこれを売上や売上原価に振り替えます。
しかし、法人税や消費税の負担軽減や、公共工事を受注している企業の「経営事項審査(経審)」を意識して、
会社で未成工事支出金や前受金の金額を調整することがあります。
その結果、決算書から本当の収益を把握することができなくなります。
さらに、前受金は、工事中に発生する外注費、材料費、労務費などの経費を支払うために顧客から受領する
ものですが、
資金繰りが厳しい企業では、前工事の支払いに充当してしまうことがあります
(これを「前受金の先食い」と言います)。
新たな工事を受注しないと資金繰りが厳しくなるため、利益よりも新規工事の獲得が最優先され、
その結果、低利益または赤字工事を受注することになりがちです。
残念ながら顧客側も会社の足元を見ており、利益交渉が進まないことが散見されます。
これが資金繰りをさらに悪化させ、さらなる悪循環となります。
そもそもこのような悪循環に陥った原因は、
工事ごとの利益管理の杜撰さ、
顧客都合による売上債権の未入金、
事故による赤字工事
などが挙げられます。
悪循環を断ち切るための手段ですが、資金繰りが悪化した時点で金融機関からの借入はできないか、限度があります。
可能であれば、手持ち資産の売却による手元資金の増加
少なくとも、資金繰り表を基にした支払いコントロールの強化と工事ごとの利益管理の徹底が必要です。